九州一周したはなし

November 9, 2025

はじめに

理由など特にないですが、雑に旅行記をしたためることにします(n回目)。

例の如く一週間の休みを錬成することに成功したので、九州一周の旅に出ることにしました。前回と同じく鉄道全制覇というよりは、観光も合わせて無理せず行きたいところを巡りつつざっくり一周する旅にしようと思いました。自分が旅行での出来事を思い出すきっかけになればいいので、だらだら書いていきます。

ざっくり目的

  • 九州を鉄道でざっくり一周し、各県で宿泊する
  • 端の駅に訪問する(たびら平戸口、一応佐世保駅も、西大山駅)
  • 宗太郎駅を訪問する
  • 宿は安いところを選び、その代わりに食事には予算を設けない。今年も好きなもの食べよう!
  • 1日目

    さてさて前日に再速で退勤を決めたのにもかかわらず、行きつけの居酒屋に向かってしまった私は案の定お昼にお目覚めです。まぁ土日も合わせて9日あるので、焦る必要はありません。ひとまず九州まで移動しようということで、新幹線を使って博多を目指します。この日は昼過ぎ、(時間的には夕方といったほうが良かったですが)の出発になってしまったのでそれ以上の移動はせずに終えることにしました。博多駅に着いたあとは夕食を駅近くにある博多めん街道で豚骨ラーメンを食べました。その後鳥栖まで移動し宿泊です。道中乗降人数が多いところでこの地域の生活圏を感じつつ、宿の最寄り駅まで移動します。宿泊したのは値下げできな(かった)例のホテルです。佐賀県の訪問が消化試合みたいになってしまったことをここに謝罪します。休暇がもう少し後であればバルーンフェスタを見に行けたのですが。残念です。

    2日目

    この日は鳥栖からスタートです。日本最西端の駅・たびら平戸口駅を目指します。少し時間があったので駅舎と周辺を散策します。今だ国鉄の雰囲気を色濃く残している駅とあって魅力的でした。駅舎とホームを繋ぐ地下道には、鳥栖駅の歴史を紹介するギャラリーになっており、鉄道とともに発展してきた鳥栖の歴史を知ることができます。

    鳥栖駅からは特急を利用して平戸の街を目指します。途中の有田駅で松浦鉄道に乗り継ぎます。松浦鉄道は小さめの駅にこまめに停まっており、まさに地域輸送に特化した鉄道という感じがしました。それぞれの駅には地元の小中学生が描いた絵が飾られており、地域との繋がりが感じられました。途中の伊万里駅で系統が変わるので、乗り換えのため下車します。伊万里駅は筑肥線との接続駅になっており、JRと松浦鉄道の線路が道路を挟んで向かい合っている面白い構造の駅でした。JRの駅はこじんまりと住宅街に紛れてしまっていて、本数も多くないようでした。平日の昼の時間帯は窓口も閉まっており、鉄道が通っているとはにわかには信じられない静けさでした。乗り換えの時間はあまり長くはなかったので、駅周りの散策はほどほどにし、佐世保方面の便に乗り込みます。途中の松浦駅では駅舎のあちこちに花が植えられていて、良い駅だと感じました。海岸線に沿って走る区間もあり、旅情が掻き立てられます。

    一時間ほど車両に揺られ、目的のたびら平戸口駅に到着しました。個人的には最西端の駅と言われて頭に浮かぶのはこちらの駅なのですが、鉄道だけでなくモノレールも含めるとゆいレールの那覇空港駅だったり、鉄道駅に限ってもJRであれば佐世保駅になります。

    少し歩いたところに田平港があり、市場もあります。昼食はこの後の佐世保駅周辺で済ませる予定だったので、ここではお土産を買うに留めておきます。各地で日本酒を買うことにしているのですが、この地方で買った日本酒が面白かったです。森酒造所のFirandというお酒です。白ワインのような日本酒という触れ込みに偽りはなく、またかなり甘みもあり、いい意味で日本酒とは思えないお酒でした。

    最西端の鉄道駅ですが、他の最端の駅と違い陸地のギリギリまで到達できるかというとそうではなく、平戸大橋を渡って平戸市街方面に足を伸ばすことができます。有名どころだと教会や春日の棚田といった文化遺産もあり、足を伸ばしたくなります。車やバイクが欲しくなりました。

    佐世保方面の便に乗り佐世保市街を目指します。佐世保市街に入ったタイミングで中佐世保駅を通りましたが、市街地の中にポツンと簡素な作りの駅があり、ミスマッチ具合に惹かれました。佐世保では佐世保バーガーを食べました。佐世保市街には防空壕をそのまま商店街にしたトンネル横丁という場所があります。駅の目の前には佐世保港が広がっており、イベントも定期的に開かれているようでした。見どころはまだまだありそうなので、今度はじっくり観光したくなりました。

    長らくお世話になった松浦鉄道からJRに乗り継ぎ、長崎駅を目指します。車内はかなりの混雑具合でしたが、途中のハウステンボス駅で多くの人が降りて行きました。大村湾に注ぐ川に沿うように位置している駅ですが、ハウステンボスの眺望はかなり良かったですね。行ってみたくなりました。途中は海岸線にかなり近いところを走行しており、時間帯が合えば千綿駅など訪れてみたかったですが、日が沈んで来ていたのでおとなしく長崎駅を目指すことにします。電車に揺られ、終点の長崎駅に到着します。西九州新幹線の開業に伴って駅舎は新しくなり、地上にあった駅舎は全て高架化されています。しばらく前のことですが、いまだに地上にある駅舎の印象が強かったので、綺麗に整備された駅周辺に感動していました。長崎市街ではたまたまリストにあったお店に訪れました。同じように一人で訪れていた外国人観光客の方と話が弾み、閉店の時間まで夢中になっていました。締めにオリジナルの油そばを提供していただけるのですが、お酒が入った体に沁み渡る味でした。

    3日目

    午前中は市内を観光することにします。出島、眼鏡橋、新地中華街、平和公園と代表的なところを見てまわりました。出島では復元された街並みを歩きながら、当時の雰囲気に思いを馳せます。眼鏡橋のあたりは複数ある橋に対応するようにお寺が多く存在しており、細い路地の先に立派な山門が現れたりして面白いエリアでした。新地中華街は観光客で賑わっており、細い路地に急に現れる中華街が見どころでした。平和公園では少し足を止めて静かに想いを馳せていました。市内にはそのそれぞれを結ぶように市電が走っており観光には便利です。ちなみにですが、長崎は「推しポケモン」としてデンリュウを掲げています。私も好きです、デンリュウ。

    さて、次の目的地である熊本に向かいます。単純に鉄道で移動するという手もありましたが、長崎市からであればフェリーに乗って熊本を目指すルートもあります。ただ午前中を市街地の観光に費やした結果日没までに熊本に辿り着けそうになかったので、今回は時間を優先して西九州新幹線を利用するルートにしました。みなさんご存知とは思いますが、西九州新幹線は現在佐賀県の武雄温泉駅までとなっており、新鳥栖までのルートがありません。そのため、武雄温泉駅で在来線のリレーかもめに乗り換える必要があります。この仕組みを実際に体験してみると少し不思議な感じがしました。いつか直通する日は来るのでしょうか。

    さて、熊本に着いた後に向かったのは、干潮時に海へと続く道路が現れることで知られる長部田海床路です。SNSで紹介されるような所に向かうことにした自分に驚いていたのですが、まぁそういう気分だったので。平日だしな…とタカをくくっていたのですが、道中同じ駅で降りる人が想像以上に多く少し嫌な予感がしつつ向かいます。現地に着くと案の定駐車場をうめ尽くすほどの車が。中にはツアーバスなんかもあり、とんでもない盛況ぶりでした。人の多い場所はどうも苦手なのでさっさと帰ることにします。予想できたはずですけどね。ですが話題になるだけあって綺麗な場所でした。

    こっちはあまりにも完成された雰囲気だったので思わず撮ってしまった一枚です。

    ホテルに帰ってからは近くの繁華街を散策し、熊本ラーメンを食べに行きました。豚骨スープをベースにマー油をくわえたスープが特徴です。煮卵ではなく生卵を絡めて食べるオプションもあり珍しかったので頼んでみました。パンチの効いた味でしたが、個人的には少し物足りなくあまり刺さりませんでした。

    4日目

    九州にはフリーきっぷの類があまり多くないイメージです。時期柄秋の乗り放題切符が利用できる期間だったためそちらを使うことにします。

    さて、本日の目的地は日本最南端の駅・西大山駅と、南の最果て・枕崎駅です。ですがその前に、せっかく熊本駅に来たので、隣にある平成駅にも立ち寄りました。名前が特徴的なだけで、特別なことはなく住宅街の中にある至って普通の駅です。通勤通学の時間帯だったので、他の方の邪魔にならないうちに早々に引き上げます。この時間にどう見ても通勤通学目的ではない格好でカメラを構えているだけで、不審者扱いされかねませんからね。

    本題に戻って、時間的に明るいうちに両駅を訪れたかったので、新幹線ワープをつかうことにしました。人吉駅や、ループ線とスイッチバックを併せ持つ大畑駅など、鉄道マニアにとっての見どころが山ほどある肥薩線を乗り通してみたかったのですが、先の豪雨災害の被害を受け不通となっていることはみなさんの知るところかと思います。肥薩おれんじ鉄道を使うという手もありましたが、今回は最南端への訪問を優先することにしました。

    鹿児島中央駅から指宿枕崎線に乗り最果てを目指します。学生需要があるようで、2両編成の列車は都心の通勤ラッシュを彷彿とさせる混雑具合でした。とはいえ大学の最寄駅でほぼ全ての人は降車していき、指宿駅を過ぎる頃には同業者の方しか残っていないようでした。後から地図を見てみたのですが、乗降客数が多かった駅は見事に市街地部分の端になっていました。

    列車は海岸線に沿って枕崎方面に進みます。指宿枕崎線は特に枕崎方面に向かう際は進行方向左側に座ることをお勧めしておきます。指宿駅や隣の山川駅までの景色は特に見どころです。西大山駅では、2分ほど停車するため写真撮影の際にはホームを利用してくださいねとのアナウンスがありました。往復の便の関係上私は枕崎駅を先に訪れる予定だったので、発車の合図で車内に戻ります。こういった乗務員の方々の対応を密かに「ファンサ」と呼んでいるのですが、やはり日本最南端の駅とあってファンサが豪華だなぁ、終着駅じゃなくて途中駅なのに親切だなぁと思っていました。

    西大山駅から30分弱、ついに最果ての駅枕崎駅に到着します。駅に着く直前には遠くからでも目立つ立神岩が見えました。平日の昼間ということもあり、ここまで乗り通した人はほとんどが同業者の方だったと思います。皆さん思い思いに写真撮影を楽しんでいました。自分もそうでしたが。一面一線の駅のため、列車はすぐに折り返します。そのため滞在時間はそれほど残されておらず、駅前のスーパーでお昼ご飯を調達するのがせいぜいでした。今度またじっくり観光に訪れたいと思います。

    手短に散策を終えて折り返しの便に乗車し、改めて西大山駅を目指します。改めて訪れた際にも同様にファンサが行われていました。その便には途中駅から乗車してきた地元の中高生も多く利用されていたので、少々意外でした。

    西大山駅に電車が訪れる時間に合わせて車で駅を訪れる人も多く、駅は束の間賑やかになります。列車が駅を去ると一人また一人と離れていき、ほんの数瞬だけ駅を独り占めできる時間が訪れます。ですがそれも束の間、意外にも車で訪れる人が絶えませんでした。指宿から3駅という距離なので、レンタカーがあれば訪問のハードルは低いのかもしれないですね。中にはマイクロバスで訪れる外国人観光客の姿もあり、それに関しては正直なところ驚きを隠せませんでした。夏であれば付近にはひまわり畑があるので景色も素晴らしいと思います。一方でそういった畑は観光目的で栽培されているわけではないと思っており観光地化されすぎる場所でもないと思うので、静かな雰囲気が保たれることを願うばかりです。

    そんなわけで少し賑やかすぎたので、駅を離れることにします。駅の目の前にはお土産物のお店があり、地元の特産品を購入できるほか到着証明書を発行してもらえます。自家製のジェラートも販売しているので、ぜひ立ち寄ってみてはいかかでしょうか。わたしが訪れたのは10月の中旬でしたがまだまだ暑い日が続いていたので、冷たいジェラートが体を癒してくれます。駅から少し離れた場所でのんびり過ごしていると、思いのほか人の出入りが多くなかなかどうして賑やかでした。それ自体は悪いことではないのですが、やはりこういった場所では少し落ち着いた気持ちでいたいもので、周辺の散策に出かけることにします。あてもなく歩いていると、視界いっぱいに畑が広がり、その中に開聞岳が堂々とした姿を見せていました。後から振り返って地図を見る限り近くの海岸までなら歩いて行けそうだったので、行かなかったのが少し惜しまれますが、ゆったりとした時間を過ごせたので良しとしましょう。散策中は道の真ん中をうろうろしてしまい、相当不審者に見えただろうなと反省しています。

    西大山駅に戻る頃には陽が沈みかけていました。駅から見ると開聞岳を望んでちょうど逆光になっていました。

    さて、この旅では食事とお酒に全てかけるため、宿は可能な限り安い場所を選ぶことにしています。とはいえお得意の無計画旅なので直前に予約を入れることが多く、結局いいお値段することもあるのですが。というわけで今回も最安値を叩きだしたゲストハウスを選択したのですが、なかなか限界ギリギリの宿でした。ロッカーはあったもののベッドがある部屋には鍵がかかっていないタイプでした。ですがラウンジの部分に手作りのマップが用意されており、そこでお勧めされていたお店に伺うことにしました。そのお店はメニューのないタイプで、個人経営の小さなお店でした。少し遅めの時間でしたが入店すると優しく出迎えていただき、「苦手なものはない?」との問いかけに肯定を示しつつ、焼酎をロックで好きなように飲みながらママさんが出してくれる料理をいただきました。個人的な話ですが、醸造酒は得意でも蒸留酒はあまり得意ではなく、旅の疲れもあってか、すぐに酔いが回ってしまいました。銭湯施設にも行こうと考えていたのですが、身の危険を感じたのですぐに引き返しました。せめてコインランドリーには寄っておこうと思ったのですが、そこで数十分爆睡をカマしてしまいました。日本の治安の良さに改めて感謝する一幕となりました。

    5日目

    昨日のこともあったのでチェックアウトギリギリまで寝て過ごします。せっかく鹿児島市街に来たのだから桜島に行ってみようかという気になったので向かいます。桜島港からは循環バスが出ており、自動音声によるガイドを聞きながら主要な観光スポットを巡ることができます。

    桜島と鹿児島市街を結ぶフェリーではうどんの売店がありました。ちょうどお昼の時間帯というのもあり、お出汁のいい香りに釣られてフェリーの中で昼食をとりました。行きの便に乗った時からお出汁のいい香りがしていたので、帰りには食べようと決めていました。

    さて鹿児島市街に戻り、宮崎方面への移動を続けます。竜ヶ水駅で降りることも考えましたが、今回は見送りました。熊本駅で見かけた霧島神宮駅のポスターに使われていた写真の雰囲気がとても良かったので、途中霧島神宮駅を訪れました。駅には足湯もあり、しばし休憩しました。駅の売店では蘇芳色で染めた扇子を見つけ、その美しい色合いに惹かれましたが、購入するか迷って結局見送りました。こういう時にはお金をあまり惜しまないように決めていますが、さすがに躊躇するほど高かったので。

    宮崎駅では目当てのチキン南蛮が食べられるお店に立ち寄ることに決めていました。ということでウキウキで向かいましたが、なんと定休日との張り紙が。Google mapでしか確認していなかった自分を呪いつつ、もう一つの名物辛麺を食べに行くことにしました。辛麺とは、こんにゃく麺と言われる独特の食感の麺と溶き卵とニラを具材に唐辛子の効いたスープを合わせた宮崎の名物です。あまりよく調べてはおらずあくまで個人の印象ですが、広まり出したのは比較的最近だと思っています。繁華街の喧騒に紛れて、雑居ビルの奥にひっそりと佇むお店でいただきました。

    明日の旅程の都合上、この日のうちに延岡まで移動することにしていました。ということで宮崎駅から延岡駅を目指します。平日だったこともあり、乗客はほぼ全員が地元の中高生でした。2両の車両はかなり混雑していました。最近の鉄道車両によくあることではあるのですが、窓に貼られたフィルムのおかげで時間帯を考えるとただでさえ何も見えない車窓が余計に何も見えず、おまけに車内の光景が反射するようになっており視線の行き場がなくなります。非常に肩身の狭い思いをしつつ、存在感を極限まで消して過ごします。途中の駅で人の入れ替わりが数回あり、日向市街を過ぎる頃には空席が目立つようになりました。こうした便に乗っていると、地域一体の作りがなんとなくわかるのも鉄道旅の面白いところかなと思っています。

    終点の延岡に着く頃には夜もだいぶ更けていました。私のような乗り鉄と言われるカテゴリの人には宮崎駅よりも延岡駅の方が馴染みがある気がします。明日は朝が早いため、早めに就寝することにしていました。散策に繰り出したい気持ちを堪えて早めに就寝します。自分はうまく時間がかみ合わすに訪れるのを断念しましたが、延岡には辛麺の発祥と言われている店舗があります。宮崎を観光する際にはぜひ。

    6日目

    朝早くとは言いましたが、目的は6時10分発の電車なのでそれなりにゆっくりできました。佐伯方面の始発に乗って、目的地の宗太郎駅へと向かいます。延岡―佐伯間のこの区間では、普通列車は1.5往復しか設定されていません。その他のダイヤはすべて特急列車で、この区間には特急車両しか配置されていなかった記憶です。そのため普通列車にも特急用車両が使用されており、一部では「乗り得列車」なんて呼ばれていた記憶があります。

    時間帯のおかげでまだ朝霧の残る中を宗太郎駅目指して進んでいきます。途中北川駅のホームの細さに驚いたり、日向長井駅付近の田畑が朝霧で何も見えない風景に秘境に向かっている感覚が込み上げてきます。佐伯方面の始発列車ということで車内には数名の乗客がいましたが、皆さん佐伯まで乗り通すようでした。切符の検察の際に車掌さんに行き先を告げる必要があったのですが、宗太郎の名前を告げると豪快に笑っておられました。気持ちはわかります。同業者の姿は見当たらず、珍しいなと思っていたのですが。1駅前の市棚駅から乗車されてきた方が1人いらっしゃいました。私と同じように宗太郎の名前を告げているところを見るにどうやら同業者のようで、その方と一緒に宗太郎駅に降り立ちます。

    ここで少しだけ宗太郎駅の紹介を。秘境駅マニアの憧れとも言えるでしょうか、マニアの間ではよく知られた存在です。先ほども少し言及しましたが、延岡―佐伯間の各駅停車は1.5往復しかなく、特急は停車せずその数少ない普通列車しか停まらない駅が複数存在しますが、その中で特に有名なのがこの宗太郎駅です。他の駅は集落の近くにあり道路からのアクセスも比較的容易ですが、宗太郎駅は急峻な山越え区間にあることも相まって道路から離れた場所にあるため、秘境駅としてその名を馳せています。やはりと言いますか、この駅も元々は信号場として開設された駅でした。急行列車が停車していた時代もあったことから、2面2線の立派なホームを備えています。まだ朝霧が少し残る時間帯ということもあり、鳥の囀りと静寂が迎えてくれます。まわりに人家がないのかというとそんなことはなく、むしろ集落は駅の目の前に存在しています。

    徒歩でも国道に出られないことはなく脱出が不可能というわけではないのですが、次の列車・佐伯方面への列車であり宗太郎駅に訪れる最終列車まで12時間以上もあるため、始発にして最終列車である延岡方面行き普通列車に乗り込み、宗太郎駅を後にします。車内には通学途中の学生の姿が見られました。往路では利用がなかった駅からも学生の方の利用があり、朝夕の通勤・通学需要に合わせられたダイヤであることを実感します。帰りの時間帯に佐伯から延岡方面への普通列車が設定されていないことから想像するに、佐伯方面に通学する学生はよほど少ないのですかね?もしくは特急列車の設定で十分という可能性もありますが。市棚駅から乗車された同業者の方は市棚駅で降りていかれました。

    延岡駅に戻ってきましたがまだ朝の時間帯でした。市街を散策しましたが、お店もほとんど開いておらず静かなものでした。前日に辛麺を食べていたこともあり、お店が開店し始める時間は待たずに早めに次の目的地へ向かうことにしました。大分方面へと列車を乗り継ぎ、午前中のうちに大分駅に到着します。やはり特急列車が並ぶ姿は壮観ですね。まだ時間に余裕があったため、宇佐駅まで足を延ばしました。お約束のような訪問ですが、やはり来ておきたい場所です。

    さらに急遽、湯布院にも行ってみることにしました。久大本線の列車に揺られ、湯布院駅を訪れ、小一時間ほど中心の通りを散策します。夕方近くの訪問だったこともあり、メインの通りの商店は次々と閉まりはじめていました。醤油プリンと書かれた幟に惹かれてふと立ち寄ったりしましたが、売り切れていました。明日来てみてと言われて少し迷いましたが、今回は見送ることにしました。

    この日は別府に一泊します。大分市街からも近く、観光地という雰囲気がありながらも通学需要があるのか学生の利用も多く、不思議な感じがしました。宿に荷物を置いて少し体を休めてから街に繰り出します。夜でも営業している定食屋を見つけたので入ります。鶏天とりゅうきゅうという地元料理の贅沢セットを注文し、日本酒も少しだけいただきます。少しだけにしたかったのですが、気づけば二合ほど飲んでしまいました。そのとき選んだ銘柄が美味しかったので、お土産に買うことに決めました。あとで紹介します。

    宿は想像以上に快適でした。ゲストハウスだったのですが、一人にはもったいないくらい広い個人スペースで、一般的なカプセル式の個人スペースの2、3倍はあったんじゃないかと思います。少なくとも今まで泊まったゲストハウスの中で一番広かったです。ところどころ古き良き造りが垣間見えつつも丁寧にリノベーションされた館内はとても綺麗でした。フロントでは缶のクラフトビールも販売されており、フロントの営業時間ぎりぎりで声かけても快く対応していただけました。ギリギリにすみませんでした。静かな夜の別府で、心地よい疲れを感じながら一日を締めくくりました。

    7日目

    前日は少し飲みすぎてしまい、宿を出たのは10時になろうかというところでした。この手の旅では毎日飲みすぎている気もしますが。

    別府といえば言わずと知れた“地獄めぐり”の地です。海地獄、鬼石坊主地獄、かまど地獄、鬼山地獄、白池地獄、血の池地獄、そして龍巻地獄の7つを巡るコースが定番でしょうか。せっかくであれば七箇所全てを見て回りたいと思いました。「2時間半で地獄めぐりは回れる」という言葉をどこかで見かけたので、無謀にもそれを信じて宿を後にします。別府駅からは路線バスが出ているのでアクセスはいい方です。地獄めぐりで巡る地域は山の中腹にあり、移動を考えると高いところから低いところへと進むのが楽との案内もあったため、最初は海地獄を目指します。金曜日のお昼前という時間でしたが、海地獄方面のバスは観光客で満員でした。

    海地獄には大きめのお土産やさんがあり、昨日目をつけていた日本酒が販売されていました。この先の地獄にはお土産屋さんがないかもしれないと思い、最初の地獄で早々お土産を購入してしまいましたが、なんとこのお店では郵送の扱いがなくちょっとした誤算でした。血の池地獄の方ならどうだったんだろうなどと考えながら次へ向かいましたが、結果的にはここでしか取り扱いがなかったので購入しておいてよかったです。大内酒造さんの花笑みというお酒です。こちらもかなり美味しいお酒でした。

    さて、足早に巡るのであれば所要時間は2時間半と聞いたことを先ほども述べましたが、なんと最初に訪れた海地獄だけで気がつけば1時間近く滞在していました。2時間半で地獄めぐりを終える人は観光RTAでもやってるんでしょうかね?

    他の地獄も巡っていると、地獄の名の由来や成り立ちをちゃんと知ることができました。作物が育てられず地獄と呼ばれた地域が、一転観光地としての賑わいを獲得してゆく裏に、地元の人々がこの湯とともに暮らしてきた歴史が垣間見えます。平日ということもありどこへ行っても海外からの観光客が多く、聞こえてくる言葉も様々でした。観光地ではお金を落とすことが信条の一つなのですが、各地獄で食べ歩きを続けるうちにお腹がどんどん重くなっていきます。プリンを立て続けに2つ買ってしまったのは完全に判断ミスでした。温泉で蒸したプリンは食べたいなーと思ったのですが、まさか次の地獄では先日別の場所で食べ損ねた醤油プリンが売られているとは思わないじゃないですか。

    お昼は、地獄めぐりの途中で見かけた雰囲気のいいお店に入り、だんご汁をいただくことにしました。だんご汁とはこの地域の郷土料理で、小麦粉をこねて薄く伸ばして作られるだんごを味噌仕立ての汁に入れた料理です。だんごと聞くと球状のものを思い浮かべる方が多いと思いますが、ここていうだんごはうどんのように平く引き延ばした状態のものを指します。前日に食べ損ねていたのでちょうど良いタイミングでした。根菜やきのこなど具材もたっぷりと入っており、素朴ながら滋味深い味わいで、少し歩き疲れた体に染み渡るような優しい一杯でした。具沢山で想像以上にボリュームがあったので、定食にせず単品で頼んで正解でした。

    食後は血の池地獄・竜巻地獄を目指します。ガイドの方からはタクシーやバスを利用するといいですよと案内していただきましたが、3kmなら徒歩圏内だろうと思い歩き始めます。みゆき坂・いでゆ坂を通って途中みはらし坂を通りました。坂の上からは別府の街並みと湯けむりが一望できると聞いて、実際に歩いてみると、坂道の途中から見える景色がとても印象的でした。この地獄めぐりの地域にはレンタサイクルが充実しており、利用するのも良かったかもしれませんが、歩いたからこその発見もありました。こういう観光地ではゆっくり歩いてみたくなるというものです。

    血の池地獄では足湯で散策の疲れを癒し、竜巻地獄での間欠泉の噴出も見学し終えると気がつけば16時前になっていました。結局半日は欲しいところですね。別府での滞在を終え、今日は博多まで移動することにします。大分からはフェリーを使うことで愛媛県に抜けられます。戻り鰹のシーズンではあるので愛媛を経由して高知まで抜けるルートにも少し心惹かれましたが、今回は九州旅行ということで、またの機会に取っておきましょう。

    博多に到着してからは、屋台を求めて夜の街を散策しました。今回の旅行に出る前に、博多に行ったらぜひ行ったほうがいいと、とある屋台をおすすめされていたのでその屋台を目指して歩きます。たどり着くまでにさまざまな屋台とそこで食事を楽しむ人を見ることができ、ワクワクした気持ちになります。さて目的の屋台ですが、私が訪れた時にはもうすでに姿はありませんでした。この地域の屋台は営業に特別な許可がいることは知っていたので、大きく場所は変わらないはずと思い周辺をよく探しましたが、見つけられませんでした。まぁこういうこともあるでしょうと気持ちを切り替えて次の屋台を探します。

    無性に焼きラーメンが食べたくなったので、焼きラーメンがメニューにある屋台を探します。最初に訪れた屋台は少しイマイチでした。アルバイトのスタッフの対応がまぁ仕方ないという感じでした。ちなみに焼きラーメンはスープで味付けするタイプでした。二軒目に訪れた屋台は満足度が高かったです。こちらは焼きラーメンをソースで仕上げたもので、香ばしさと濃厚な旨味が絶妙でした。三軒目では餃子を注文し、常連の方の話に混ぜてもらいました。こちらの屋台は地元の方々との結びつきが特に強く感じられる屋台でした。常連の方のお一人に鉄道旅が趣味だった方がいらっしゃったので、鉄道談義に花が咲きます。3軒はしごしたこともあってそれなりにお腹は膨れていたのですが、お酒のアテに「茄子なら食べれそう?」とメニューにはなかった茄子を焼いてくれた店主の心遣いが嬉しく、旅の締めくくりにぴったりの時間でした。

    8日目

    最終日の朝。せっかく早く目が覚めたのに、なんだかんだで布団から出るのが面倒で、結局ゆっくりとした出発になりました。それでも今日は日田彦山線に乗りに行くと決めていたので、重い腰を上げて支度を整えます。

    日田彦山線は久大本線の日田駅から分岐し、小倉へと抜ける路線です。2020年の豪雨で一部区間が被災しましたが、現在はBRTとして運行が再開されています。鉄道とバスが繋がる独特の路線で、以前から一度は乗ってみたいと思っていました。廃線区間の中でも彦山~宝珠山間はバス専用道として再整備されているのですが、整備された鉄道跡地を走るのは少し不思議な感じがしました。

    日田彦山線の終点・小倉に着く頃にはすっかり夕方になっていました。雨も降り始めてきて、ギリギリ間に合ったという感じでした。ここから新幹線に乗り換え帰路につきます。旅の最中に自宅に送りつけた荷物の受け取りもあることですし、翌日は一日ゆっくり休むことにしました。結局、佐賀にはあまり立ち寄れずに終わってしまい少し申し訳ない気持ちです。影が薄いまま通り過ぎてしまいましたが、また改めて訪れる機会を作りたいと思います。

    おわりに

    九州一周ということで、気づけばけっこうな距離を移動していました。すべてを回りきったわけではもちろんないので、また季節を変えて訪れたいと思います。観光地の賑わいと無人駅の静けさ、その両方を味わえるのが鉄道旅の面白さだと思います。次に来るときはもう少し計画的に…できるわけがないので、懲りずに今までと同じような行き当たりばったりで続けます。

    おまけ

    全都道府県宿泊を密かに目標にしていて、完全に終わった気でいたのですが、よくよく考えてみるとあと愛媛、高知の2県が残っていました。佐賀県も宿泊しかしていないので、次こそはしっかりと観光したいと思います。